令和5年度重要技術管理体制強化事業(宇宙分野における重要技術の実態調査及び情報収集)調査報告書

掲載日: 2024年9月18日
委託元: 経済産業省
担当課室: 製造産業局航空機武器宇宙産業課宇宙産業室
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報告書概要

この報告書は、日本の宇宙分野における経済安全保障の強化を目的として、宇宙状況把握(SSA)関連技術と宇宙太陽光・無線エネルギー伝送技術について詳細な調査・分析を行った報告書である。

宇宙状況把握技術については、米国、欧州、日本などの政府機関および民間企業によるSSAシステムの構築状況を調査し、軌道上物体の観測、追跡、分析に必要な技術を整理している。民間SSAサービス事業者として、COMSPOC、L3Harris、Lockheed Martin、LeoLabsなど主要企業の技術動向を分析し、各社の強みと提供サービスを明確化している。また、米国TraCCSシステムをベースとして、SSAに必要なチョークポイント技術を特定し、観測技術、データ処理技術、分析技術の各領域における日本の技術レベルを評価している。評価結果では、宇宙での実績がない一部技術を除き、多くの技術で海外と同等レベルにあることが示されている。

宇宙太陽光発電技術については、米国、欧州、英国、中国を中心とした各国の開発状況を詳細に調査している。米国ではNASAのSBSPスタディやCaltechのSSPD実証機、欧州ではESAのSOLARISプログラム、英国のCASSIOPeiAシステム、中国のCASTロードマップなど、各国で活発な研究開発が進行している状況を報告している。また、マイクロ波からミリ波を中心とした無線給電技術の市場動向と技術動向を調査し、近年のパワービーミング技術の実証実験事例を多数紹介している。

経済性評価では、既存のSSPSモデルを拡張したコスト算出ツールを作成し、JSS(旧USEF)マルチテザー型やふろしき型など複数のSSPSモデルについて、宇宙部重量、コスト、総構築コストの関係を定量的に分析している。感度分析により、太陽電池単価、輸送単価、システム重量などの各パラメータがSSPS総構築コストに与える影響を評価し、目標コスト達成のための技術目標値を導出している。

日本における課題として、SSPS実現に向けた長期的な技術開発戦略の必要性、要素技術の他分野への応用促進、研究開発実施体制の強化が挙げられている。また、軌道上物体の急速な増加によりSSAの重要性が高まる中、日本の戦略検討と継続的な動向注視が不可欠であることが強調されている。本調査は、宇宙分野における日本の技術的優位性確保と自律性強化に向けた重要な基礎資料となっている。