令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(販促商品等のリードタイムの延長、物流レジリエンスの向上に向けた小売の在庫管理・発注業務のDX)最終報告書
報告書概要
この報告は、販促商品等のリードタイム延長と物流レジリエンス向上に係る小売業界のDXについて書かれた報告書である。経済産業省が有限責任監査法人トーマツに委託した流通・物流効率化事業の実証実験結果をまとめている。
2024年問題として知られるトラックドライバーの労働時間規制強化に対応するため、消費財サプライチェーン全体の最適化が急務となっている。従来、新商品・販促商品の発注は人の経験に依存し、リードタイムが3日以内となっている小売店舗が約半数を占め、これが卸の過剰在庫や物流の非効率を招いている。また、自然災害の激甚化により物流レジリエンスの向上も重要課題となっている。
実証実験では、コープさっぽろとウオロクが協力し、シノプスの需要予測システム「sinops-CLOUD」を活用して三つの取り組みを実施した。第一に新商品・販促商品の発注適正化では、需要予測により14日前の早期発注確定を実現し、リードタイム延長の可能性を確認した。第二に店舗配送量の曜日平準化では、納品量を曜日間で平準化することで配送トラックの増便削減や陳列人時の削減効果が示された。第三に気象予報情報の活用では、大雪前後の発注量最適化により物流混乱の防止と欠品抑制の可能性が示唆された。
実証結果から、需要予測システムの導入により従来困難とされた新商品・販促商品でもリードタイム延長が可能であることが確認された。配送量平準化では物流波動による追加配送削減効果が認められ、気象災害対応では事前の意思決定ルール策定の重要性が明らかとなった。ただし、サプライチェーン全体の最適化には複数小売への取り組み拡大と商習慣の変革が必要であり、官民共同での業界全体の推進が求められるとしている。
