令和5年産業経済研究委託事業(バッテリー人材育成に資する教育プログラムの策定に向けた調査事業)成果報告書
報告書概要
この報告は、令和5年度に実施されたバッテリー人材育成に資する教育プログラムの策定に向けた調査事業について書かれた報告書である。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて蓄電池は最重要技術の一つとして位置づけられており、蓄電池産業戦略では2030年までにサプライチェーン全体で約3万人の人材育成・確保を目標としている。これに貢献するため、関西エリアでは産学官が参画する「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」が設立され、高校生・高専生を対象とした座学と実習を織り交ぜた教育プログラムの実施が重要とされた。
本事業では令和6年度からの実施校での本格導入を前提として、バッテリー教育の授業テンプレート検討会を全6回開催した。産業界からは電池工業会や主要メーカー、教育機関からは関西圏の高校・高専が参画し、学生に響く内容かつ広く導入可能な教育プログラムを産学共同で具体化した。検討会では社内研修資料を活用したプロトタイプ教材の検討から始まり、授業構成、指導書の設計、能動的学習のためのアイデアについて議論を重ねた。
効果検証として複数の高校・高専で座学デモを計12回実施し、延べ505名の学生が受講した。アンケート結果では89%の学生がバッテリーに対して興味やワクワクを感じたと回答し、構造や用途への驚きや将来への期待を示すコメントが寄せられた。また産総研関西センターにおいて教員及びセルメーカー等45人を対象とした小型電池製造実習のデモも実施し、実習内容の効果検証を行った。
教育プログラム策定においては、教員による授業構成のアレンジに対応可能な章・節立て、高校・高専で使い分けできる構成、複数パターンのワークシートによる難易度調整などの工夫を取り入れた。また産業界からの具体的事例提示やデモ授業での教員の工夫を指導書に反映することで、教員の授業準備コストを最小化しつつ品質を担保する仕組みを構築した。
今後の普及・効果的導入に向けては、実施校教員のナレッジ蓄積・共有の仕掛け、動画を活用した授業の拡大展開、学内で実施可能な実験集の作成・展開などが提案されている。
