令和5年度エネルギー需給構造高度化対策調査等事業(エネルギー転換に関する日独エネルギー変革評議会に係る調査)報告書
報告書概要
この報告は、日本とドイツのエネルギー転換に関する日独エネルギー変革評議会の活動と研究成果について書かれた報告書である。
2020年に日本が2050年カーボンニュートラル目標を表明したことを背景に、2016年に設置された日独エネルギー変革評議会は、両国のエネルギー専門家による協力体制として機能している。評議会は日本エネルギー経済研究所とドイツのWuppatal Institute等が事務局を担い、幅広い専門分野の評議委員で構成されている。2023年度の活動では、ウェビナーによる成果発信、評議会での議論、産業界や若手研究者との対話を実施した。
研究の重点分野として「電力を中心としたエネルギー市場の在り方」「省エネルギーの深堀に向けた政策強化の可能性」「産業政策としてのエネルギー移行への取り組み」の3つを選定した。電力市場分野では、太陽光や風力などの変動性再生可能エネルギーの増加に伴う需給調整問題を取り上げ、脱炭素火力や蓄電池、デマンドレスポンスなどの柔軟性確保のための市場制度を分析した。省エネルギー分野では、既に高いエネルギー効率を達成している両国における更なる効率改善の可能性と政策手法の比較を行った。産業政策分野では、新型コロナやウクライナ侵攻を契機とした各国のグリーン産業政策の強化を踏まえ、日独の協力可能性を検討した。
ドイツの政策動向として、2038年末までの石炭火力廃止と2023年4月の原子力発電所完全停止により、電力安定供給への懸念が高まっていることを指摘している。これに対しドイツ政府は将来の水素専焼転換を前提としたガス火力発電所の建設に160億ユーロの支援を用意している。また炭素中立実現に向けて、従来反対の多かったCCS技術の推進策を2024年2月に発表した。
日本への政策提言として、電力市場の柔軟性確保において日本が先行している経験をドイツと共有すること、省エネルギーでは直接規制対象外の中小企業への対策強化として政策モニタリング改善や企業間協力強化、エネルギーサービス強化が重要であること、炭素中立戦略では産業競争力を考慮したエネルギーミックスの構築と現実的な政策形成プロセスの必要性を挙げている。
