令和5年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(サウジアラビア及びアラブ首長国連邦との宇宙分野における官民協力のあり方に係る調査)
報告書概要
この報告は、サウジアラビア及びアラブ首長国連邦との宇宙分野における官民協力のあり方について書かれた報告書である。経済産業省の委託により一般財団法人日本宇宙フォーラムが実施した調査結果をまとめたものであり、両国との宇宙産業協力を深化させるための基礎的情報収集と分析を行っている。
サウジアラビアについては、2016年に発表されたビジョン2030の下で石油依存体質からの脱却と包括的発展を目指しており、国家産業発展・物流プログラムを通じて宇宙分野を含む重点産業の育成に取り組んでいる。キングアブドルアジズ科学技術都市が発表した将来技術報告書では、小型衛星やキューブサット、偵察衛星の付加価値利用、宇宙探査技術など多岐にわたる優先技術が特定されている。国際協力では中国、ロシア、フランスなどと宇宙協力協定を締結し、アルテミス合意にも署名している。
アラブ首長国連邦では、火星探査計画「エミレーツ・マーズ・ミッション」の一環として2020年に日本のロケットで探査機「ホープ」を打ち上げ、翌年火星周回軌道投入に成功するなど宇宙探査分野で先行している。UAE宇宙庁を中心とした宇宙政策の推進体制が整備され、国際協力では日本を含む多くの国や機関と協力関係を構築している。
2023年12月にリヤドで開催された日・サウジアラビア官民ワークショップでは、サウジアラビア側から産業育成への意欲が示され、日本企業5社が事業紹介を行った。サウジアラビアは人口規模が大きく国土も広いため宇宙技術の適用範囲が広く、セキュリティ・安全保障、都市開発、エネルギー、インフラ、環境分野での宇宙技術活用が期待される。
両国での宇宙ビジネス展開における課題として、サウジアラビアでは自国産業創出重視により拠点設置や技術移転要求の可能性があり、UAEでは欧米企業との競合激化が挙げられている。政府支援として継続的な官民ワークショップ開催、現地拠点設置支援、市場情報提供などが要望されており、両国政府間の上位層を交えた協議やネットワーキング機会の創出が重要とされている。