令和5年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(EVと電力システムの統合等に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、電気自動車と電力システムの統合に関する調査について書かれた報告書である。
経済産業省資源エネルギー庁の委託を受けて三菱総合研究所が実施した本調査は、EVが移動インフラとしての重要性と系統貢献のポテンシャルを有する分散型エネルギーリソースとして位置づけられることを背景としている。自動車業界と電力業界をはじめとする関連業界において、EVと電力システム統合に向けた将来シナリオや課題認識に時間軸等のズレがあり、構造的膠着状態に陥っていることが問題となっている。
調査は四つの柱で構成されており、EVグリッドワーキンググループの開催、将来シナリオの検討、課題の整理・特定と解決策の検討、報告書作成が実施された。ワーキンググループは全5回開催され、自動車OEM、充放電器メーカー、一般送配電事業者、小売電気事業者、アグリゲーター等の25名程度の委員が参加した。
将来像として、EVがカーボンニュートラルやエネルギー有効利用に資するものとなり、普及したEVが電力系統課題解決に貢献し、その対価がユーザーに還元されることで価値が高まることを想定している。2030年と2040年の段階的な取り組みに向けたマイルストーンも整理され、2030年時点では充電インフラ30万基の普及が前提とされている。
課題については、現状と将来像のギャップを体系的に整理し、ユーザーの追加的経済価値の実現に向けて情報、システム、経済性、制度等の多岐にわたる課題が特定された。これには制御のための情報不足、遠隔操作機能の普及不足、調整力市場への参加制限、インセンティブの予見性不足等が含まれている。
