令和5年度中小企業活性化・事業承継総合支援事業(事業承継等に関する中小企業関係租税特別措置の利用状況に関する調査事業)報告書
報告書概要
この報告は、中小企業の事業承継やM&Aに関連する租税特別措置の利用状況について調査した報告書である。
中小企業では経営者の高齢化と後継者不在の問題に加え、新型コロナウイルス感染症による廃業増加、デジタルトランスフォーメーション等による事業転換の必要性が高まっており、事業承継やM&Aの重要性が増している。このため、事業承継税制、中小企業事業再編投資損失準備金、登録免許税・不動産取得税の特例等の税制措置が講じられている。また、生産性向上を支援する観点から、中小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、固定資産税の特例等が措置され、従業員の賃上げを支援する中小企業向け賃上げ促進税制も用意されている。
調査では専門知識を有するスタッフ5名による問い合わせ窓口を設置し、平日6.5時間の対応を実施した。年間を通じて最も問い合わせが多かったのは中小企業経営強化税制であるが、年度始まりと年度末は中小企業向け賃上げ・所得拡大促進税制が最多となった。問い合わせの7割は事業者からで、年度初めには税理士等からの問い合わせが増加する傾向が見られた。
各税制の分析結果では、申請手続きや要件に関する問い合わせが多く、特に申請タイムリミットや提出資料、個別ケースでの適用可否についての質問が頻繁であった。企業へのヒアリングでは、税制活用により積極的な設備投資が可能となり、生産性向上や人手不足解消に繋がっている一方、建物や車両の対象化、申請期間の延長、類似制度の整理等の課題が指摘された。