令和5年度産業保安等技術基準策定調査研究等事業(休廃止鉱山における坑廃水処理に係る新たな安全性評価手法の開発に係る調査事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、休廃止鉱山における坑廃水処理に係る新たな安全性評価手法の開発について書かれた報告書である。
金属鉱業等では事業終了後も坑口からの排出水や集積場からの浸透水に含まれるカドミウムや砒素等の重金属により水質汚濁や農用地汚染が発生し、人の健康被害や農作物被害等の深刻な影響を引き起こす可能性があるため、昭和48年に制定された金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づき計画的な鉱害防止事業が実施されてきた。従前の基本方針では坑廃水中の重金属処理量を評価基準としていたが、第6次基本方針策定に向けた審議において事業量の計画値と実績値の乖離が指摘されたことから、排水基準等を満たしつつ継続的に坑廃水処理を実施していることを適切に評価する新たな手法の検討が必要となった。
新たな評価手法として排水基準適合率、排水基準の超過件数、年平均値の排水基準適合の3つの候補が検討され、既存データを最大限活用し事業者に新たな負担をかけない方法として、各現場の処理水の年平均値が排水基準に適合するかという指標が提案された。実際のデータを用いた検証では過去10年間で全ての現場が適合していると推定され、年12回程度の適切な頻度での採水が行われていることも確認された。
また豪雨等の自然災害が激甚化・頻発化している状況を踏まえ、処理能力を超過し未処理坑廃水を放流せざるを得ない場合の安全性評価手法も開発された。段階的なリスク評価として渇水流量で評価するTier0、河川流量シミュレーションによるTier1、詳細評価のTier2の3段階を設定し、義務者不存在鉱山を対象とした評価が実施された。
