令和5年度休廃止鉱山における抗廃水処理の高度化技術調査事業調査報告書
報告書概要
この報告は、休廃止鉱山における坑廃水処理の高度化技術について書かれた報告書である。
金属鉱業等の休廃止鉱山では事業活動終了後も坑口や集積場等からヒ素、カドミウム、鉛といった重金属を含む坑廃水が流出し続けており、これを放置すると健康被害、農作物被害、漁業被害等の深刻な社会問題を引き起こすため、地方公共団体等が昼夜問わず継続的な坑廃水処理を行っている状況にある。このため、当該処理の省エネルギー化対策が強く求められている。
本調査事業では、重金属除去作用を有する植物や微生物を利用した自然回帰型坑廃水浄化システムであるパッシブトリートメント(PT)について、坑廃水の状況や立地条件等を勘案した最適なPTの検討を行うとともに、水質改善メカニズムの効果検証等を実施した。また、電力供給が困難な山間部等に位置する坑廃水処理施設において、水量・水質把握や運転管理のための操業コスト負担軽減を目的として、無給電かつ長距離での遠隔監視システムの導入手法検討等の技術実証調査を実施した。
具体的な取組として、A鉱山におけるマンガン酸化菌を活用した接触酸化方式による性能評価及び現場適用検討、B鉱山における硫酸還元菌を活用したバイオリアクターシステムの現場適用検討、C鉱山における石灰石を充填したウェットランドシステムの現場適用検討を行った。さらに、遠隔監視システムの導入に向けた調査研究では、モデル鉱山において無給電かつ長距離での遠隔監視システムの実証試験を実施し、省エネルギー効果や異常気象時の適用可能性等について検討を行った。また、休廃止鉱山の鉱害防止対策については、グリーン・レメディエーション(元山回帰)など中長期的視点に立った総合的な鉱害防止対策として、既存対策技術の課題整理とその最適化検討を行い、新たな鉱害防止対策に関する調査を実施し、休廃止鉱山における坑廃水処理の恒久的なエネルギー消費量削減を目的とした取組を展開した。
