令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(諸外国のスポーツデータに係る権利関係等調査事業)最終調査報告書

掲載日: 2024年10月16日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務・サービスグループサービス政策課スポーツ産業室
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令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(諸外国のスポーツデータに係る権利関係等調査事業)最終調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、諸外国におけるスポーツデータや肖像権等に係る権利関係について調査した報告書である。近年、コロナ禍を経てスポーツ分野でDXが加速し、放送・配信、ファンエンゲージメント、競技力強化等の多くの場面でスポーツデータやデジタル技術を活用した新たなサービスが展開されている。欧米を中心にその市場が拡大する一方で、我が国においてはスポーツデータの権利性やその帰属主体等の権利の在り方が必ずしも明らかになっていない状況がある。また、諸外国におけるスポーツベッティングの合法化と市場拡大に伴い、我が国のスポーツを取り巻く知的財産その他の権利物が無許諾で利用される事例も生じている。

本調査では、米国、英国及びフランスを対象として、スポーツデータ、肖像権・パブリシティ権、放映権、主催権に係る権利関係の法的整理を行った。スポーツデータについては、試合経過データ、成績データ、トラッキングデータ、身体データの4種類に分類して分析している。米国では著作権による保護が中心であり、事実そのものはパブリックドメインとされるが、創作性のある編集については保護される可能性がある。英国では著作権とデータベース権による保護が検討され、フランスでは主催権という独特の権利が認められている。日本では営業秘密や限定提供データとしての保護が可能である。

肖像権・パブリシティ権については、各国で異なる法的枠組みが存在している。米国では州法により異なるアプローチが採られ、英国では明確な権利として確立されていないが、契約による解決が図られている。フランスでは人格権として肖像権が保護され、日本では裁判例により肖像権・パブリシティ権が認められている。放映権については、各国とも契約や規約による権利関係の整理が重要となっている。

第三者による無許諾利用への対応としては、各国において契約上の手当てや技術的措置による対策が講じられている。具体的には、来場者向け規約でのデータ収集禁止、公式データプロバイダーとの契約による非公式収集の防止等の措置が採られている。日本における今後の方向性として、スポーツデータについては営業秘密と限定提供データの両方の要件を充足する管理を行い、契約上の手当てを整備することが重要である。また、権利関係の予見可能性を高めるためのガイドライン作成・公表も有効とされている。