令和5年度エネルギー需給構造高度化基準認証推進事業(ルール形成戦略に係る調査研究(国際水素サプライチェーン構築のルール形成戦略に関わる調査研究))最終報告書

掲載日: 2024年10月22日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部水素・アンモニア課
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令和5年度エネルギー需給構造高度化基準認証推進事業(ルール形成戦略に係る調査研究(国際水素サプライチェーン構築のルール形成戦略に関わる調査研究))最終報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、国際水素サプライチェーン構築のルール形成戦略について書かれた報告書である。日本政府が2030年水素300万トン、2050年水素2000万トンの導入目標を掲げる中、液化水素やメチルシクロヘキサン(MCH)による国際水素輸送技術における日本の技術的優位性を活かし、国際市場でのルール形成を主導する必要性について検討している。

調査では水素キャリア(液化水素、MCH、アンモニア)に関する国際標準化動向を分析し、ISO/IEC規格の現状把握を行った。現在78件の水素関連ISO規格が存在し、そのうち自動車関連が37件と大部分を占めている。液化水素関連標準は7件、MCH/LOHC関連は現状存在しないことが判明した。TC197(水素技術)が28件を担当し、日本が議長を務めている。

液化水素分野では、LNG分野の法規制や国際標準化の現状調査を通じて、液化水素サプライチェーンの標準化項目を検討した。アメリカ、オーストラリア、カタール、フランスなどの規制状況を調査し、日本の技術的地位を分析した結果、液化水素関連技術において日本企業が独自の優位性を有することが確認された。

MCH分野では、ドイツでDIN SPEC 91437がLOHC(液体有機水素キャリア)品質評価基準として策定されている。欧州ではベンジルトルエン(BT)を用いた複数のプロジェクトが進行中であり、Hydrogenious社が主要事業者として活動している。MCHとBTは共通課題を有するため、協力関係の構築が有益であると分析された。

アンモニア分野では、燃料アンモニアに関する国際標準化がAEA(Ammonia Energy Association)を中心に進められており、低炭素認証やIMOのIGFコードへの追記が議論されている。国内審議団体として、TC197をHySUTが担当し、NEDO支援のもとで民間団体との連携体制が構築されている。

これらの調査結果を踏まえ、日本が国際水素サプライチェーン構築において貢献しうる標準化項目の分析と、複数のルール形成戦略シナリオが検討された。日本の技術的優位性を活かし、安全基準や共通仕様の国際標準化を主導することで、水素エネルギーの社会実装加速と国際競争力確保を目指している。