令和5年度後継者支援ネットワーク事業報告書
報告書概要
この報告は、令和5年度後継者支援ネットワーク事業について書かれた報告書である。
中小企業庁による本事業は、2025年に団塊の世代が75歳以上となる中で、中小企業の事業承継を促進するため、39歳以下の後継者を対象とした「アトツギ甲子園」を開催したものである。後継者が家業の経営資源を活かした新規事業アイデアを競うピッチイベントとして実施され、全国を九州・沖縄、中国・四国、近畿、関東・中部、北海道・東北の5ブロックに分けて地方予選大会を開催し、勝ち抜いた後継者による決勝大会を東京で実施した。
事業の背景として、地域経済を担う中小企業の経営者が世代交代の山場を迎える中、後継者に対する新規事業開発の評価や相談相手の不足という課題が存在していた。そこで現経営者が現役の並走期間中に後継者が将来を見据えた新規事業開発に挑戦する意識を普及させることを目的とし、後継者の魅力を社会に知らしめ、機運醸成を図ることとした。
事業内容は大規模ピッチイベント、有識者による支援、参加者募集、記念品制作、事例掲載、コミュニティ構築で構成された。地方予選大会では各ブロックで15名程度の後継者が登壇し、審査委員による評価を受けて決勝進出者を選出した。決勝大会では経済産業大臣賞をはじめとする各賞を授与し、優秀な取組を表彰した。
考察では、ピッチイベントについて後継者・観覧者ともに約9割が満足以上と回答したが、審査基準の透明性や地域特性を踏まえた評価への要望があった。メンタリングは約8割が満足したものの、より具体的なアドバイスや時間の確保が課題として挙げられた。後継者の考え方や求める支援が多様であることが判明し、今後はより個別化した支援が必要だとされた。また、後継者の掘り起こしや集客の困難さが再認識され、広報戦略の重要性が指摘された。
