令和5年度技術開発調査等推進事業(研究開発事業の事業化等に関する実態調査)報告書
報告書概要
この報告は、経済産業省の研究開発事業における製品・サービスの事業化実態について書かれた報告書である。報告書では、過去に実施された研究開発事業のうち事業化が確認された53事業115機関を対象とした包括的な調査結果がまとめられている。アンケート調査とヒアリング調査を通じて、研究開発成果がどのように社会実装に至ったのか、その成功要因と社会への影響について詳細に分析している。調査結果によると、研究開発事業の成果により事業化製品・サービスにおいて必須となる技術を獲得した機関が7割強を占め、製品・サービスの性能向上に寄与した機関が5割弱であった。事業化に至る要因として、研究開発期間中に市場が求めるレベルをクリアすることを念頭に置いた取り組みが重要であることが判明している。また、事業化後の継続的な製造体制構築やサプライチェーンの整備が成功に直結していることも明らかになった。社会への影響については、継続的に販売されている製品・サービスが既存市場の拡大、環境負荷低減の促進、材料分野の発展、社会基盤の構築といった広範囲にわたる社会的効果をもたらしていることが確認された。特に遺伝子組換えイチゴを用いた動物用医薬品「インターベリーα」や、AI技術を活用した衛星画像自動判読システム「MiteMiru森林サービス」などの具体的事例を通じて、研究開発成果の社会実装プロセスが詳細に検証されている。今後の政策提言として、研究開発事業継続のための制度確立、産学官連携機会の創出、事業化を阻害する法規制の緩和が重要な課題として挙げられており、これらの知見が今後の産業技術政策の企画立案に活用されることが期待されている。
