令和5年度放射光施設等利活用による中小企業価値創造促進支援事業事業報告書
報告書概要
この報告は、放射光施設を利活用した地域企業の事業競争力強化及び価値創造促進について書かれた報告書である。経済産業省が実施するサポイン事業やGo-Tech事業において、中小企業のものづくり基盤技術の高度化を図るため、2024年4月に本格稼働予定のナノテラスをはじめとする放射光施設の利活用促進が重要な課題となっている。しかし、ものづくり中小企業の多くは放射光技術に馴染みが薄く、具体的なメリットをイメージすることが困難な状況にある。本事業では、放射光等利活用による事業化等加速支援事業として、ポテンシャルユーザー企業候補の抽出・選定のため全国のものづくり中小企業に対してアンケート調査を実施し、放射光計測等専門家と事業化等専門家を派遣して価値創造ミーティングを開催した。また、公設試等放射光利活用実践等支援事業では、複数の公設試が広域連携して実際の計測実践に取り組む4つのプロジェクトを実施し、微細欠陥を含む粒子積層体の非破壊検査技術、ポリプロピレンの対候性試験における高感度な劣化指標の検討、セルロースナノファイバー分散液を用いたハイドロゲルの構造解析、放射光利用による三次元内部観察を通じた技術支援力向上などのテーマで計測・分析を行った。さらに、放射光産業利活用促進広報事業として全国の公設試や地域企業を対象としたフォーラムを開催し、現地70名、オンライン79名の参加を得た。事業の成果として、公設試における放射光計測に対する敷居が大幅に低下し、今後企業から相談があった際には積極的に推奨したいとの意識変革が生まれた。また、複数の公設試が連携することにより互いのノウハウ共有が可能となり、新たな知識・技術の習得機会が創出された。今後の課題としては、地域企業における放射光利活用の意識変革と公設試を含む相談体制の構築が必要であり、計測によって事業競争力を強化する重要性の認識促進、公設試における橋渡し機能の強化、広域公設試等連携ネットワークの永続的な構築が求められる。
