令和5年度地域デジタル人材育成・確保推進事業(デジタル時代における情報処理技術者試験の在り方に関する調査)調査報告書

掲載日: 2024年10月26日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務情報政策局情報技術利用促進課
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令和5年度地域デジタル人材育成・確保推進事業(デジタル時代における情報処理技術者試験の在り方に関する調査)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、経済産業省が実施した情報処理技術者試験制度のデジタル時代における在り方について調査した報告書である。令和5年度に経済産業省の委託事業として、みずほリサーチ&テクノロジーズが50件のヒアリング調査、文献調査、有識者による試験ワーキンググループの開催を通じて実施された包括的な調査研究となっている。

情報処理技術者試験制度は昭和44年の発足以来、50年以上にわたり我が国のIT人材育成において中核的な役割を果たしてきた国家試験制度である。現在13区分の試験を展開し、年間約50万人が応募する最大規模の国家試験として機能している。これまでの累計応募者数は約2,202万人、合格者総数は約334万人に達し、企業の新人研修や人事制度において広く活用されている実態が確認されている。新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、令和2年度から情報セキュリティマネジメント試験および基本情報技術者試験のCBT方式導入が実現し、令和5年度からは通年試験化により受験者の利便性向上が図られた。

今回の調査では、デジタル社会の進展に伴い情報処理技術者試験制度が直面している新たな課題が明確に整理された。特に試験の学習と評価機能の向上、試験活用性のさらなる向上、試験体系の合理化、試験運営のDXという4つの主要課題が特定されている。企業や産業界からは、DX推進人材育成に活用できる試験区分の創設、ITパスポート試験の次段階に相当する適切な水準の試験区分設置、事業会社の高度DX推進人材に対応する試験区分の必要性が指摘されている。また、デザイン、サービスマネジメント、データマネジメント、ビジネスアナリシス、AI等のDXにおいて重要な領域の強化も求められている。

大学等教育機関からは、高校教科「情報Ⅰ」や大学の数理・AI・DS認定プログラムの学習範囲に適合した試験区分の必要性、高校生向けのテクノロジ系のみの入門試験の要望、教育教材の充実に関する意見が寄せられた。一方で、情報処理技術者試験の強みとして、国家試験としての信頼性の高さ、エンジニア能力の基礎となる汎用的知識や論理性の評価、他に代替困難な独自性が評価されている。しかし、民間ベンダー資格のような即戦力につながる実務スキルの評価の困難さ、更新制がないことによる最新スキル評価の限界、ユーザー企業の高度DX人材育成への活用の困難さが課題として認識されている。

試験運営のDXに関する調査では、生成AIの積極活用を含めた試験運営業務の効率化について大きな可能性が確認された。特に試験の採点業務や問題作成業務において生成AI等の先端技術が効果的に活用できる可能性があることが判明している。今後の取組方針として、各課題について実現に向けた取組の加速化が示され、特に試験体系の合理化については新たな討議体制の設置が検討されることとなった。本調査を通じて、情報処理技術者試験が民間資格とは異なる独自の意義を有していることが改めて確認され、デジタル時代においても継続的な検討を通じて我が国の人材育成基盤としての役割を果たしていくことが強く期待されている。