令和5年度産業保安等技術基準策定研究開発等(リコールリスクレベルの明確化等に関する調査研究事業)【調査報告書】
報告書概要
この報告は、令和5年度に実施されたリコールリスクレベルの明確化等に関する調査研究事業について書かれた報告書である。
消費生活用製品のリコールが長期化し企業負担となっている課題を受けて、効果的なリコール対応のあり方を検討することを目的として実施された。平成19年度以降に開始されたリコール案件は約1900件に上り、そのほとんどが実施率100%を達成できずに長期化している現状がある。
調査研究事業は7つの柱から構成されている。第一に消費者アンケートによる個別リコール実施策の効果検証では、全国の男女1万人を対象にWebアンケートを実施し、リコール周知手段の効果や消費者の行動変容要因を分析した。第二に事業者との共同研究による個別リコール実施策の効果検証・ガイドライン作成では、過去にリコールを実施した企業5社程度からデータ提供を受けて分析を行った。
アンケート調査の結果、消費者がリコール周知手段として効果があると考える手段は「テレビCM」が最も多く、次いで「DM(郵便)」、「新聞社告・チラシ」となった。実際にリコールを知ったきっかけとしては「DM(郵便)」が最も多かった。リコールに応じた理由としては「身体に危害が及ぶリスクが高いから」が最多で、応じなかった理由は「購入してからの期間が長いから」が最多であった。
海外のリコール対応にかかる調査では、法制度や行政運用について文献調査及び外国行政機関等へのヒアリングを実施した。残存率算出モデル作成のための統計調査では、業界算出モデルが存在しない生活用製品10品程度について市場残存率算出モデルを作成した。リコールハンドブック改訂版の概要版を日本語、英語、中国語で作成し、地方経済産業局を通じた消費者向け製品安全セミナーを開催した。
研究成果から、効果的なリコール周知方法の明確化、消費者の行動変容要因の特定、海外制度との比較分析などが得られた。今後の課題として、効果測定方法の確立、企業負担軽減策の検討、残存率モデルの精度向上などが挙げられている。
