令和5年度化学物質規制対策(毒性発現予測システムの活用促進に向けた課題等の調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、毒性発現予測システム(AI-SHIPS)の社会実装に向けた課題と対応策について調査した報告書である。従来の化学物質安全性評価は動物実験に依存していたが、費用・時間・動物福祉の観点から、化学構造から毒性を予測するQSAR等の代替手法が求められている。平成29年度から5年間で開発されたAI-SHIPSは、化学構造、体内動態、インビトロ試験データを学習データとして毒性発現機序情報を提示可能な画期的システムである。
本調査では、システムの自立的運営に向けた課題として、セキュリティ対策、ユーザ利便性向上、予測性能改善が挙げられた。技術的対応として、一般ユーザ向けの共有型サービスとエキスパートユーザ向けの専有型サービスを提案し、それぞれパブリッククラウドとプライベートクラウドでの提供を検討した。システム改修には約1年から1年半を要し、運用機関の体制整備とともに段階的な実施が必要である。
国際展開では、OECD・QSARツールボックスへの搭載を目標とし、QMRF作成とJaCVAMでの審議が急務とされている。最短で2026年頃の利用開始を想定し、Repository公開後の行政適用を目指す。システム精度向上のため、有害性データの継続的蓄積が重要であり、データの守秘義務や管理方法、類似システムとの連携可能性を検討した。欧州化学品庁等の取組を参考に、国内外の当局や国際機関との連携による統一化データベース構築が化学物質リスク管理の高度化に寄与すると期待される。
