令和5年度産業経済研究委託事業(諸外国における開示の実態、及び開示と企業価値の関係に関する調査報告書)
報告書概要
この報告は、日本、米国、英国、ドイツの4か国における企業の制度開示および任意開示の実態について調査した報告書である。近年、企業情報の開示が投資家の投資判断の基礎となる重要なインフラとして認識される一方で、日本企業の開示制度が過度な負担となっている可能性や、企業価値向上に資する開示となっているかという課題が指摘されている。さらに、日本企業の資本効率性や長期成長投資が伸び悩み、PBRが1倍を割る企業が欧米より多いなど、企業の収益性や成長性が市場に十分評価されていない状況がある。
調査では、各国の制度開示として会社法や証券関連法に基づく開示書類の種類、開示要求事項、開示時期等を比較分析した。日本では有価証券報告書、決算短信、コーポレートガバナンス報告書等、米国では年次報告書や四半期報告書、英国では年次報告書や戦略報告書、ドイツでは経営報告書や非財務報告書が主要な制度開示書類となっている。また、各国40社程度を対象とした実態調査により、開示内容、開示量、開示時期等の詳細な比較分析を実施した。
分析の結果、ドイツ企業では財政状態の分析において管理対象とする採算関連指標、マクロ環境解説、収支項目解説という流れで構成される場合が多く、投資家の理解を深める効果的な開示が行われていることが確認された。また、ドイツ企業では翌年の財務指標予測値について言及する企業が多いものの、予測方法や開示方針は企業により異なっている。日本企業については、コーポレートガバナンス関連の情報が複数の開示書類にわたり重複して開示されており、効率性の観点で改善の余地があることが示された。
