令和5年度グリーン・トランスフォーメーションリーグ運営事業費(排出量取引制度等の法的論点調査事業) 調査報告書
報告書概要
この報告書は、排出量取引制度等の法的論点について書かれた調査報告書である。本調査では、グリーン・トランスフォーメーションリーグ運営事業の一環として、カーボン・プライシングや排出量取引制度の導入に向けた法的課題の詳細な分析が行われている。
報告書では、まず基礎概念として「キャップ&トレード」と「ベースライン&クレジット」の考え方、価格安定化措置について整理し、義務的な排出量取引制度における類型A(削減目標の設定)と類型B(排出枠の割当)という二つの制度設計モデルを提示している。また、J-クレジット制度における創出、帰属、移転の仕組みについても詳述されている。
法制化前段階における検討では、カーボン・クレジットの法的性質について、所有権の客体性や債権的構成等の複数の法的アプローチを分析し、現行のGX-ETSにおける超過削減枠の解釈論を展開している。権利の帰属・移転については、口座簿上の記録による効力発生要件や対抗要件の具備方法、担保設定の可否、第三者保護規定等の私法上の論点を詳細に検討している。
規制法上の観点では、金融機関の業務範囲規制、銀行業、保険業、証券業等の既存業法との関係性を分析し、カーボン・クレジット特有の業規制の必要性について考察されている。法制段階においては、憲法上の課題として営業の自由、平等原則、財産権、租税法律主義の観点から義務的排出量取引制度の合憲性を検討し、条例制度との関係性についても論じられている。
行政法上の課題では、大気汚染防止法や水質汚濁防止法等の類似制度を参考として、規制対象者の特定、削減・割当計画の策定、不服申立制度、行政庁の裁量権、情報公開制度等について詳細な分析が行われている。私法上の課題としては、EU、英国、米国、韓国等の諸外国制度を参考に、排出枠の法的性質、帰属・移転要件、民事執行法や破産法との関係について検討されている。
