令和5年度経済産業省化学物質規制対策「大学・公的研究機関と連携した化学物質管理高度化推進事業(非遺伝毒性肝発がん性の核内受容体活性化プロファイルに基づく評価の有用性検討)」報告書
報告書概要
この報告は、化学物質による非遺伝毒性肝発がん性の評価方法について研究された報告書である。令和5年度に静岡県公立大学法人が実施した経済産業省の化学物質規制対策事業の成果をまとめている。
研究では、肝発がんを引き起こす化学物質を核内受容体であるCAR、PPARα、AHRの活性化パターンに基づいて分類し、短期間での発がん性予測システムの開発を目指した。現在の発がん性評価は2年間のラット発がん性試験が標準的であり、動物愛護や経費削減の観点から代替評価法の開発が求められている。研究チームは遺伝子発現データベースOpen TG Gateを活用し、各核内受容体活性化物質を肝発がん陽性・陰性物質に分類してROC解析を実施した。その結果、肝発がん陽性物質の約8割がCAR活性化物質であることが判明した。
実験では各核内受容体の活性化評価系を確立し、特にラットCAR活性化評価系の構築に注力した。従来の培養細胞を用いたレポーターアッセイではCAR活性化の正確な評価が困難であったため、ラット初代培養肝細胞における標的遺伝子Cyp2b1のmRNA発現量測定による評価法を開発した。さらに多項目同時解析装置を用いることで、従来の定量PCR法より効率的な評価システムを構築した。
CAR依存的な肝発がんメカニズムの解明において、細胞周期のG1/S移行に関わるGADD45β遺伝子の発現増加が重要な役割を果たすことを発見した。マウスを用いた実験により、CAR活性化がGADD45β遺伝子プロモーターのCpGアイランドの脱メチル化を誘導し、間接的にGADD45βの転写活性化を引き起こすことが示された。このエピジェネティックな制御機構は、CAR依存的な肝発がんプロモーション作用の新たな分子機序として注目される。今後は複数の核内受容体を同時に活性化する化学物質への対応や、ヒトへの外挿性の検討が課題となっている。