令和5年度産業保安等技術基準策定研究開発等事業 (電気用品 、ガス用品等製品のIoT化等による安全確保の在り方に関するガイドラインの普及・市場動向等調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、IoT化された電気用品・ガス用品等製品の安全確保の在り方に関する動向調査について書かれた報告書である。近年のIoT製品の普及拡大を受け、遠隔操作による新たなリスクに対応するため、令和3年に制定されたガイドラインの実効性確保と普及啓発を目的として調査が実施された。
主要な調査内容として、遠隔操作に向き不向きな製品・機能の整理では、国際規格IEC60335Part2の審議動向を踏まえつつ、現行の分類フレームワークを維持することを確認した。また、分類対象機器にAV機器やこたつ、家庭用治療器等を新たに追加し、より実情に合った整理を行った。
IoT製品のリスクアセスメント手法については、製品の仕様や使用方法に起因する危害の予見可能性を「頻度数」として定量化し、リスク低減措置の効果である「低減数」との差分からリスクの発生頻度を評価する手法を開発した。この手法を用いて14種別の製品を対象に46件のユースケース・リスクシナリオを作成し、製造事業者のリスク評価や対策検討を支援する枠組みを整備した。
実態調査では、国内製造事業者によるIoT製品の開発が継続的に進展しており、ガイドラインの認知・活用も拡大していることが確認された。一方で、今後のエコシステム拡大により、サードパーティ製品の影響やネットワーク・サーバへの依存等、製造事業者が直接コントロールできないリスクの増大が懸念される状況も明らかになった。
海外動向調査では、アメリカ、EU、韓国等10ヶ国・地域において、IoT製品のセキュリティ強化を目的とした法整備やガイドライン策定が進められていることが判明した。特に欧米では従来のインターネット関連法制にIoT固有のセキュリティリスクを考慮した規制が追加されており、グローバルでの安全対策強化の動きが加速している。
今後の課題として、国際規格の審議結果を踏まえた分類の見直し、技術進展に対応したリスクアセスメント手法の継続的改善、サードパーティとの協働による安全確保体制の構築等が挙げられる。また、製品安全の観点からセーフティとセキュリティの知見を融合した総合的な安全対策の検討が急務である。