令和5年度成長型中小企業等研究開発支援事業(中小企業のイノベーションや産学連携に関する実態調査)- 最終報告資料 -
報告書概要
この報告は、日本の中小企業のイノベーションや産学連携に関する実態調査について書かれた報告書である。総務省の科学技術研究調査などの文献調査および山形県、茨城県、福岡県でのヒアリング調査を通じて、我が国の中小企業による研究開発・イノベーション活動と産学官連携の現状と課題を明らかにしている。調査の結果、日本の企業研究開発費に占める中小企業の割合はOECD諸国の中で最低水準であることが判明した。これは中小企業の研究開発支出が少ないのではなく、大企業の研究開発支出が他国と比べて圧倒的に多いことが主要因である。中小企業によるイノベーション活動については、他国と比較してイノベーション活動を実施する企業の割合は標準的であるものの、イノベーション成果に結びついていない状況にある。特に研究開発を伴ってイノベーションを実現することが少なく、大学等との共同でのイノベーション活動を実施する中小企業も少ない。政府の研究開発支援については、直接的支援は各国と比較して少なく、中小企業向けの補助金割合も大企業向けと比べて小さい。間接的支援である研究開発税制は大企業にとって金銭的インセンティブが大きい制度であるが、中小企業にとっては手続きコストを加味すると必ずしもメリットがあるとは言い難い。産学連携については、大学の研究費における民間負担率は他国と比べて依然として低く、中小企業からの研究資金受入件数も増えていない状況である。ヒアリング調査では、多くの中小企業が大学との連携という選択肢を認識しておらず、相談力や被支援力が弱いことが明らかになった。一方で、適切な大学教員との連携を行った中小企業は効果を実感しており、大学活用のノウハウを持つ企業が存在する。大学側は外部資金獲得の重要性が増しており、大型連携を重視する傾向から中小企業との連携は相対的に劣位となっている。公設試験研究機関は中小企業の技術相談窓口として機能しているが、技術支援力の低下が懸念され、事業化支援との分断も課題となっている。これらの課題を踏まえ、中小企業のイノベーション促進に向けた環境整備が急務であることが示されている。
