令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(医療機器の供給強靭化に向けた半導体等の安定供給に関する調査)調査報告書

掲載日: 2024年11月30日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務・サービスグループヘルスケア産業課医療・福祉機器産業室
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令和5年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(医療機器の供給強靭化に向けた半導体等の安定供給に関する調査)調査報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、医療機器の供給強靱化に向けた半導体等の安定供給について書かれた報告書である。新型コロナウイルス感染症拡大以降、半導体等の医療機器部材の供給がひっ迫し、サプライチェーンにおける重大なリスクが浮き彫りとなった状況を受けて実施された調査の結果を取りまとめている。

国内の多くの医療機器メーカーが、高クラス医療機器において半導体サプライヤーや商社から供給拒否を受ける事例を経験しており、その背景にはPL訴訟に巻き込まれることへの懸念が存在している。この課題の解消を目指し、半導体サプライヤーに対する医療機器供給リスクの適切な評価情報の提供、医療機器産業の供給先としてのメリット、交渉・契約における事例調査、各ステークホルダーの行動変容促進に向けた対策整理を行った。

調査は医療機器産業への部材供給リスク、医療機器産業の動向、交渉・契約等の事例調査、医療機器メーカー・業界団体等において実行可能な対策の調査検討という四つの項目について実施された。有識者による検討会を五回開催し、各調査結果について議論を重ねた。

国内外のPL法関連訴訟の調査により、過去十年間で半導体・電子部品を含む部品サプライヤーが医療機器関連のPL訴訟に巻き込まれた判例は存在しないことが明らかとなった。米国においても、部品サプライヤーはBAA法や連邦法の専占により免責されており、実際のPLリスクは懸念されているほど高くないことが判明した。

医療機器市場は世界的な高齢化進展を背景に拡大傾向にあり、CAGR5.7%での成長が予測されている。医療用半導体市場も技術進歩に伴い成長しており、CAGR11.6%で推移すると予想される。医療機器産業は需要の安定性、高付加価値、長期契約の見込み、ブランド価値向上等の供給先としてのメリットを有している。

半導体供給ひっ迫への対応策として、企業レベルでは訴訟リスクに対する正しい理解促進とサプライヤーの適正評価・見直しが優先度の高い対策として挙げられた。業界団体レベルでは、業界内での部品仕様統一における商習慣整理、訴訟リスクに対する正しい理解促進、市況把握仕組みの確立におけるリスク情報共有が重要な取組として特定された。これらの対策実施により、各ステークホルダーの行動変容を促し、医療機器の安定供給体制構築を目指すものである。