令和5年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(ヘルスケアビジネス創出推進等事業)報告書

掲載日: 2024年11月30日
委託元: 経済産業省
担当課室: 商務・サービスグループヘルスケア産業課
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報告書概要

この報告は、地域資源(温泉・農業)を活用したヘルスツーリズム創出実証について書かれた報告書である。株式会社JTB総合研究所が代表団体となり、3つの地域で異なる実証事業を実施した内容をまとめている。

事業の背景として、働く世代の健康経営への関心の高まりやワーケーションの普及、地域の観光・農業における担い手不足などの課題があることから、旅行を通した健康増進と地域産業活性化の両立を目指した実証が行われた。具体的には、宮城県鳴子温泉郷での「寝・湯治」(温泉×睡眠)、山形県湯野浜温泉での長期ステイプログラム(就労×長期滞在)、高知県でのJTBアグリワーケーション(農業支援)の3つのプログラムを実施した。

参加者は20代から50代の働く世代が中心で、テレワーカーやフリーランスなどが多く参加した。効果測定については、脳波による睡眠測定、唾液によるストレスチェック、毛髪による中長期的なストレス測定などの客観的指標と、アンケートによる主観的健康度の測定を組み合わせて実施された。

実証結果として、客観的な健康指標では有意な変化は見られなかったが、主観的健康度は全体的に改善傾向を示した。特に「疲労感」「肩こりや腰痛」「目の疲れ」などデスクワーク従事者の不調改善に効果が見られた。参加者の満足度は高く、「普段体験できない体験ができた」が100%、「健康の回復・維持・増進に役立った」が8割を超えた。また、参加を通じて職場の健康増進施策への要望として「ワークライフバランス」「睡眠」「ワーケーション」などが増加し、プログラムの意義を実感した参加者が多かった。

今後の展開に向けては、各地域の特性を活かした持続可能な受入体制の構築が課題として挙げられている。天候や作物の生育状況に左右される農業体験では複数の連携先確保や全国展開の必要性、温泉地では個人向けのワーケーションプランや企業の小規模旅行受入への対応などが検討されている。ヘルスツーリズムの普及には、健康効果のエビデンスよりも「癒やし」「リラックス」「非日常体験」といった旅行本来の魅力を前面に打ち出し、健康要素を付加価値として位置づける方向性が効果的であることが示された。