令和5年度産業経済研究委託事業(化粧品産業の持続的な発展における今後の方向性に関する調査)
報告書概要
この報告は、化粧品産業の持続的な発展における今後の方向性について書かれた報告書である。日本の化粧品市場は2021年度に2兆2,900億円となり、2026年度には2兆6,200億円へと回復すると予測されている。市場規模は2005年以降、リーマンショックやコロナ禍の影響を受けながらも、特に2015年から2019年にかけてインバウンド需要の爆発的拡大により成長した。化粧品製造販売業は15年間で50%増加し、異業種からの新規参入が活発化している。日本の化粧品産業の強みは、アジア地域での製品ニーズ類似性、高齢社会対応商品開発、きめ細やかなニッチ需要対応、製造とマーケティング両方重視の姿勢、高品質なOEMメーカーの存在がある。一方、弱みとしては海外で稼ぐ力の不足、デジタル化の遅れ、化粧の付加価値発信不足、ブランディング力不足、産官学連携の遅れが挙げられる。現在の課題としてDX化では、パーソナライゼーション、マーケティングオートメーション、D2C戦略への取り組みが大手中心に留まっている。海外進出では中国・香港中心のアジア展開、各国規制格差への対応、EC対応が商流上のボトルネックとなっている。商品開発分野では、ライフサイエンスやバイオ技術の応用、量子コンピュータやAI活用による処方開発が進展している。ブランディングではテクニカルバリューを背景とした皮膚科学的知見に基づく商品コンセプトが注目されている。SDGs対応では環境配慮容器開発、4R取り組み、クリーンビューティー理念の浸透が進んでいる。周辺分野との連携では美容食品、美容機器、医薬品技術との融合による内外美容訴求が重要となっている。今後フォーカスすべき事項として、産官学一体のオープンイノベーション体制構築、中小メーカーへの啓蒙活動、海外需要獲得を見据えた商品開発、ジャパンビューティーブランディング戦略、サステナブル対応のマーケティング活用が必要である。