令和5年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(太平洋島嶼国における社会課題解決型ビジネス展開支援に係る調査事業) 調査報告書
報告書概要
この報告は、太平洋島嶼国における社会課題解決型ビジネス展開支援に係る調査事業について書かれた報告書である。経済産業省が株式会社クニエに委託した本調査は、自由で開かれたインド太平洋戦略の実現に向け、日本や同志国が連携して太平洋島嶼国の社会課題を民間活力も活用して解決する可能性を調査することを目的としている。調査対象は太平洋島嶼国14か国であり、各国の経済概況、外国政府の支援状況、海外企業の参入状況を分析した。特にパラオ、パプアニューギニア、フィジー、サモアの4か国を詳細調査対象として選定し、現地調査を実施した。
報告書では、各国の産業構造や輸出入状況、投資政策を詳細に分析している。多くの島嶼国が漁業や農林業を主要産業とし、観光業にも依存している状況が明らかになった。外国投資については、各国で制限業種が設定されており、特に小売業や運輸業は自国民に限定されている場合が多い。日本政府による支援は主に無償資金協力や技術協力を通じて行われ、特に水資源・防災、運輸交通、エネルギー分野で多くの案件が実施されている。一方、豪州、ニュージーランド、米国は地理的優位性を活かし、より積極的な投資と企業進出を展開している。
現地調査の結果、各国で優先度の高い社会課題が特定された。サモアでは農林水産・食品加工、観光、保健医療、電力エネルギー、インフラ建設、金融分野での課題が顕著である。パプアニューギニアは電力エネルギー、農林水産・食品加工、インフラ分野、パラオは農林水産・食品加工、インフラ建設、電力エネルギー、廃棄物管理分野、フィジーは農林水産・食品加工、観光、保健医療、電力エネルギー、インフラ建設、サービス、廃棄物管理、通信分野で支援が求められている。これらの課題に対して日本企業の技術やソリューションの活用可能性が確認された。
2023年7月に開催された国内イベントには119名が参加し、太平洋島嶼国でのビジネス展開への関心の高さが示された。参加企業からは市場規模の小ささ、地理的距離、現地情報不足などが事業展開の障壁として挙げられた。一方で、政府機関との連携促進、現地情報提供、マッチング支援などの公的支援への期待が高いことが明らかになった。企業ヒアリングでは、各社が持つ技術・ソリューションと島嶼国の社会課題との適合性が確認され、具体的なビジネス展開の可能性が検討された。
