令和5年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(ウクライナ経済復興にかかる事業可能性調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、ウクライナ経済復興における地下鉄車両近代化事業の可能性について書かれた報告書である。令和5年度内外一体経済成長戦略構築事業として、キーウメトロ車両近代化に関する事業性調査とウクライナ支援全般のプロジェクト候補発掘調査が実施された。
ウクライナは2022年2月のロシア侵攻により深刻な被害を受け、首都キーウ市のメトロは市民の重要な交通手段であるとともに空爆時のシェルターとしても機能している。キーウメトロは3路線、69.65km、52駅を運営し、戦争前は年間約5億人が利用していたが、2022年は1.6億人まで減少している。現有車両817両のうち約半数が車齢30年以上の旧ソ連製であり、抜本的な改善が必要な状況となっている。
本プロジェクトは、2014年から2017年に実施されたNEDOによる車両近代化事業の実績を基に、第1ステージとしてワルシャワメトロから譲渡された60両、第2ステージとして既存の300両を対象とする。近代化の核心は主回路システムの改良であり、直流駆動からVVVFインバータ制御の交流駆動への変更により約40%の消費電力削減とCO2排出量削減が実現される。
施工はウクライナのクリュコフ社が担当し、日本技術者の現地渡航は不要である。改造工事期間は60両で30か月、事業費は第1ステージで約100億円程度と想定される。環境効果として、1両あたり年間97トンのCO2削減が見込まれ、60両導入により年間5,820トンの削減となる。
プロジェクトの妥当性は高く、既往実績により技術リスクが小さく、戦争下でも実施可能である。また雇用創出効果も期待され、G7議長国として日本の国際貢献における意義も大きい。資金調達については第1ステージは無償資金協力、第2ステージは円借款の活用が想定される。
さらにウクライナ支援全般として、鉄道マスタープラン、橋梁建設、医療センター整備、エネルギー事業など多様なプロジェクト候補が発掘された。復興に要する費用は4,860億ドルと膨大であり、民間投資の活用が重要である。継続的な情報収集と具体案件の協議フォローアップが復興支援の成功において不可欠となっている。
