令和5年度取引適正化等推進事業(価格交渉促進等に関する調査事業)報告書 取引適正化に向けた発注側企業の取り組み例
報告書概要
この報告は、発注側企業が取引先との価格交渉・転嫁を適正に行うための具体的な取り組み例について書かれた報告書である。企業が抱える4つの主要な課題として、取引先のニーズ把握の困難さ、適切な価格転嫁の基準設定、価格交渉に関する全社的な意識・スキル向上、および良好なパートナーシップ関係の構築が挙げられている。これらの課題に対し、産業用機械製造業や化学関連素材製造業などのグローバル企業の実践例が紹介されている。取引先のニーズ把握については、価格協議の呼びかけレター配信による全取引先との対話実施、無記名式アンケート調査による継続的な評価・改善活動、事業拠点での取引意向アンケート実施、価格改定実績のない取引先への個別事情聴取などの手法が示されている。価格交渉スキルの向上については、本社・各事業所の調達担当者から現場発注担当者まで含む全社的な研修・教育体制の構築、適正な自社査定を可能とする専門スキル習得支援、ベテランから若手への知見継承を目的とした教育プログラムの実施が挙げられている。価格転嫁の基準設定では、公表データを活用した労務費の価格転嫁に係る社内ガイドライン作成、主力拠点地域での先行的な価格改定実施とその全社拡大などの取り組みが紹介されている。パートナーシップ関係構築については、共存共栄に向けた経営改善・生産性向上の部門間連携展開、主要調達先の認定と事業方針共有による信頼関係強化、各種調査による取引先実態把握と結果に基づく支援展開が効果的であることが示されている。これらの取り組みにより、取引先との良好な関係維持と適正な価格交渉の両立が可能となり、サプライチェーン全体の持続可能な発展が実現されることが明らかになった。
