令和5年度ユニコーン創出支援事業(スタートアップが上場後も成長を続けるための調査研究)報告書

掲載日: 2024年12月21日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局新規事業創造推進室
元の掲載ページ: 掲載元を見る
令和5年度ユニコーン創出支援事業(スタートアップが上場後も成長を続けるための調査研究)報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、スタートアップが上場後も成長を続けるための調査研究について書かれた報告書である。

日本政府が2022年を「スタートアップ創出元年」として各種政策を推進する中、スタートアップ育成5か年計画では2027年度までに投資額10兆円規模、ユニコーン100社創出を目標としている。しかし、スタートアップは上場後の時価総額の伸びが1年目をピークとして、その後低い水準で推移することが判明している。

本調査研究では、「Post-IPO」におけるスタートアップを対象とし、時価総額の年平均成長率(CAGR)を目的変数として分析することで、上場後の成長阻害要因を特定することを試みている。分析手法として、仮説検証型のアプローチを採用し、機械学習モデルLightGBMと解釈性技術SHAPを活用している。

対象となるスタートアップは、2010年以降に東京証券取引所に新規上場した企業から500社を抽出し、同時期上場の非スタートアップ500社、既上場企業500社と比較分析を実施している。20の仮説を設定し、市況、業績、上場、スタートアップ固有の各要因に分類して検証を行っている。

分析結果では、スタートアップの時価総額成長率は上場2年目、3年目に有意に低下することが確認された。主要な成長阻害要因として、売上高CAGRとROEの低下が特定されている。売上高CAGRは上場時の18%から10年後には11%まで低下し、ROEも12%から4%まで低下している。これらの変化により、時価総額の年率平均成長率は約7%低下すると分析されている。

高成長企業の特徴として、M&A累計件数が3件以上、事業セグメント数が1-5つ、機関投資家持分が5%以上、内部統制監査の免除活用などが挙げられている。一方、業種ごとの社数が適正範囲にある場合や、会社予想達成率が105%を超える場合に成長性が向上することも判明している。

支援策として、成長余力の高い企業への投資集中促進、競争環境の最適化、資金調達によるM&Aプレミアム実現、監査対応コスト軽減の4つの成長ストーリーが提示されている。具体的には、業種分類の見直し、機関投資家向け情報開示強化、M&A促進措置、内部統制監査免除期間延長などが提案されている。