令和5年度北海道における多様な分野での水素等の需要の創出に向けた調査等事業報告書
報告書概要
この報告書は、北海道における再生可能エネルギーの出力制御対策と水素等の需要創出について書かれた調査報告書である。北海道では冬期の融雪・暖房需要により電力需要が夏季より高くなる特徴があり、万一電力需給逼迫が発生した場合には生命・安全を脅かす可能性があることから、デマンドレスポンス(DR)や水素利活用による出力制御対策の推進が重要である。DRの実証実験では、ハイブリッド冷暖房・給湯システムを用いて約1.0kWのDR効果を確認し、快適性を損なうことなく電気とガスの熱源切り替えが可能であることが実証された。道内のDRポテンシャルとしては、電気自動車で13MW、家庭用蓄電池で101MW、暖房設備で2,618MWなどが推計されている。水電解装置を活用した出力制御対策では、道央圏を適地として選定し、札幌市内の水素需要ポテンシャルを地域熱供給で約2億Nm3/年、都市ガス水素注入で約1,400万Nm3/年、メタネーションで約1,900万Nm3/年と試算した。モビリティ分野では燃料電池バスの導入により水素ステーションの自立化の可能性が示されている。水素の輸送手法では、圧縮水素とパイプラインの特性を比較し、距離や経路に応じた最適な選択の必要性が明らかになった。法規制については高圧ガス保安法を中心とした複数の法令が関係し、水素サプライチェーンの各段階で適切な手続きが必要である。今後の課題として、DRについては需要家へのメリットが出る電気料金メニューの検討や実証試験の継続、水素利活用については各需要家での検証や道内の特色を活かした食料品製造業などでの活用検討が重要である。