令和5年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(海外における合成メタン(e-methane)等に係る政策動向や国際的なレポート等に関する調査)報告書
報告書概要
この報告は、海外における合成メタン(e-methane)等に係る政策動向や国際的なレポート等に関する調査について書かれた報告書である。令和5年度にみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が実施した調査の結果をまとめたものであり、日本のガスの脱炭素化に向けた施策立案等に資することを目的としている。報告書では、まずIEAやIRENA等の国際機関が発行する合成メタン等に関するレポートの調査結果が示されている。IEAのガス市場レポートでは、合成メタンの製造技術として触媒メタン化と生物学的メタネーションの2種類があり、現在のコストは50-200米ドル/MBtuと高いものの、2030年には25-110米ドル/MBtuまで低下する見通しが示されている。合成メタンは既存のガスインフラで利用できる利点がある一方、エネルギー効率が悪く、電気分解とメタネーションの2段階で一次エネルギーの約半分が失われる課題も指摘されている。IRENAのレポートでは、2050年までに世界のエネルギーシステムでパワー燃料が約28%を占め、その中で合成メタンが重要な役割を果たすと予測されている。次に、欧州の政策動向として、2023年に正式採択されたREDⅢでは、EU域内の最終エネルギー消費における再エネ比率を2030年までに42.5%以上にする目標が設定され、産業部門での水素におけるRFNBO比率を42%、輸送部門でのRFNBO割合を1%とする新たな目標も追加された。水素ガス市場パッケージでは、再生可能ガスや低炭素ガスの導入促進に向けた施策が含まれ、ネットゼロ産業法では水素技術や持続可能なバイオガス・バイオメタン技術、RFNBO技術がネットゼロ技術として指定されている。各国の制度調査では、フランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、イギリスの5カ国を対象に、合成メタンやバイオガス・バイオメタン、水素に関連する戦略や制度が整理されている。これらの制度は、供給量確保の義務・目標、価格差等の低減支援、拠出金・賦課金、託送料金、環境価値の証明・分離/証書化の5つの類型に分類され、各国が様々なアプローチでガスの脱炭素化を進めていることが明らかになった。特にフランスではガス版FIT制度やバイオメタン入札制度、バイオガス生産証明書制度などの包括的な制度体系を構築し、ドイツでは国家水素戦略を2023年にアップデートして2030年までの電解槽容量目標を5GWから10GW以上に引き上げるなど、積極的な取り組みが進められている。