令和5年度ユニコーン創出支援事業(スタートアップの情報整備に関する調査)報告書

掲載日: 2024年12月21日
委託元: 経済産業省
担当課室: 経済産業政策局新規事業創造推進室
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報告書概要

この報告は、スタートアップエコシステムの形成・発展が日本経済に与える影響の分析とデータ整備について書かれた報告書である。経済産業省が2022年に策定した「スタートアップ育成5か年計画」の実効性を高めるため、スタートアップ政策のEBPMに向けて、構成要素を測定可能な指標で設定し、必要なデータ収集・整備を図ることを目的としている。

調査では、スタートアップ政策のために把握すべき基礎的な情報の整備、スタートアップと経済指標の関係の分析、特定企業の基本情報把握、ユニコーン企業及び上場後大きく成長した企業の要因分析という4つの項目を実施した。海外8か国とその業界団体の指標を調査し、ユニコーン数、雇用者数、資金調達額、Exit数などが共通指標として使用されていることを確認した。特に英国BVCAのレポートを参考に、GDP創出、雇用創出、所得創出の観点からマクロ経済への波及効果を推計した。

本調査において「設立以降一度でも外部資金を入れたことのある企業」をスタートアップと定義し、9,249社を対象とした分析を行った。その結果、スタートアップによる経済波及効果は、直接効果と間接波及効果を合わせてGDP創出で19.39兆円、雇用人数で162.4万人、雇用者収入で7.26兆円と算出された。これは国内GDP比3.42%、国内就業者数比2.42%、国民総所得比1.36%に相当する規模である。

スタートアップ先進国であるイギリスとの比較では、GDP創出効果の絶対額や対全体GDP比率では劣るものの、前提となる資金調達スケールの違いを考慮すると、日本には伸びしろがあると評価された。また、IPOまたはM&Aを行った一部のExit済企業が経済波及効果に対して大きなインパクトを示しており、スタートアップ数の増加だけでなく大型化の後押しも必要であることが示された。未来予測では、2027年に投資額10兆円を達成することで50.4兆円の経済波及効果が期待できると推計された。

J-Startup企業243社を対象とした個社分析では、関東地域に本拠地を置く企業が最も多く、産業別では情報通信産業が創出GDPの約29%を占めていることが判明した。産業・エネルギーや医療・ヘルスケア分野では投資家からの期待が高く、支援の余地があると考えられる。スタートアップは経済効果以外にも、イノベーションの促進、働き方の多様化に寄与しており、大学発スタートアップの増加、特許出願率の高さ、女性経営者比率の高さなどが確認された。