令和5年度「低レベル放射性廃棄物の処分に関する技術開発事業(原子力発電所等金属廃棄物利用技術確証試験)」報告書

掲載日: 2025年2月3日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁電力・ガス事業部放射性廃棄物対策課
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令和5年度「低レベル放射性廃棄物の処分に関する技術開発事業(原子力発電所等金属廃棄物利用技術確証試験)」報告書のサムネイル

報告書概要

この報告は、低レベル放射性廃棄物処分に関する技術開発事業のうち、原子力発電所等から発生したクリアランス金属の再利用技術確証試験について書かれた報告書である。

本事業では、中部電力浜岡原子力発電所および日本原子力研究開発機構ふげんから約26トンのクリアランス金属スクラップを調達し、電気炉容量を70トン級に大幅に増加させてブルームと呼ばれる半製品の製造実証を行った。クリアランス金属とは、原子力規制委員会が人の健康に対する影響を無視できるレベルであることを確認した金属のことである。現在24基の商業用原子炉が廃止措置中であり、クリアランス金属の再利用促進が重要な課題となっている。

実証では、原子力施設からの搬出、運搬、加工工場への搬入、溶融加工、製品保管までの全工程において、トレーサビリティの確保と適切な分別管理を実施した。各工程で放射線測定を行い、クリアランス金属による放射線の影響がないことを確認している。搬出時はゲートモニターによる測定、搬入時は計量と表面線量率測定、加工後は工場敷地内外の環境測定を行い、すべて安全性を確認した。製造されたブルーム9個には識別IDを刻印し、トレーサビリティを確保している。

有識者検討委員会では、クリアランス金属取り扱いの留意事項改定について検討を行った。主な論点として、再々利用時のトレーサビリティの扱いと消費財への流通を防ぐ仕組みについて議論された。委員らの意見を踏まえ、再々利用品のトレーサビリティ確保は不要とし、消費財以外の製品を製造する加工業者等の登録制による運用を提案している。

検討委員会では、理解ある地域の更なる拡大、特に原子力発電所の立地していない地域への展開の必要性が指摘された。また、フリーリリースに向けたロードマップの検討や社会定着の状態をどのように判断するかについて継続的な議論が必要であるとした。福井県のような国、地方自治体、事業者、地元の4者が一体となった取り組みを他地域に展開することが重要であるとしている。

本実証により、建材利用等の汎用性が見込まれる半製品について、製造から利用までの技術的可能性と安全性を確認することができた。また、複数施設から発生したクリアランス金属の混合溶融を想定した管理が可能であることも実証された。これらの成果は、将来のフリーリリース実現に向けた重要な基盤となるものである。