令和5年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業(ドイツにおけるガス利用の節約の実態に関する調査)報告書

掲載日: 2025年2月3日
委託元: 経済産業省
担当課室: 資源エネルギー庁電力・ガス事業部ガス市場整備室
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報告書概要

この報告は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けたドイツにおけるガス利用の節約・節減に関する実態について書かれた報告書である。

2022年2月のロシアのウクライナ侵攻によりドイツのエネルギー環境は激変し、特にロシア産天然ガスに依存していた製造業への影響は深刻であった。ドイツ政府は、米国や中東からのLNG輸入拡大、北部地域でのLNGターミナル建設等の緊急措置を実施した。

政府レベルの施策として、「ガスに関する緊急計画」に基づく警戒レベルの引き上げと「短期エネルギー供給安全措置規則」による省エネの義務化が行われた。また、2000億ユーロ規模の「価格ブレーキ政策」により、一般家庭や企業のガス料金に上限を設定して負担軽減を図った。さらに、ガス貯蔵法により天然ガスの貯蔵義務を課し、2022年9月には貯蔵率90%台まで回復した。

企業の取組では、製造プロセスの電化の柔軟性によって産業別の対応に差が生じた。化学、金属、ガラス産業では軽油や石油等の化石燃料への回帰を図り、食品及び紙産業ではバイオマス等の再生可能エネルギーを活用した。中小企業は廃熱利用や断熱材活用等の投資を伴わない効率向上に重点を置いた。

課題として、突発的なガス価格高騰への短期的対応の困難さ、政府からの投資支援不足、許認可取得の長いリードタイム等が挙げられた。今後の解決策として、再生可能エネルギーによる電化推進と水素エネルギーの導入が共通の方向性となっている。

エネルギー政策の展望として、「イースター・パッケージ」により2030年の総電力消費量に占める再生可能エネルギー割合を80%とする目標が設定され、改訂「国家水素戦略」では2030年までに水素需要を95-130TWhまで拡大する計画が示された。今後はドイツ全体で1800kmを超える水素パイプラインネットワークが構築される予定である。