令和5年度中小企業政策推進事業委託費(福島イノベーション・コースト構想の在り方に関する検討会(仮称)の運営・資料作成及び関連調査事業)
報告書概要
この報告は、福島イノベーション・コースト構想の在り方に関して、浜通り地域等が自立的・持続的に産業発展するための施策や課題について調査・検討した報告書である。浜通り地域等15市町村では、避難指示解除時期の違いにより復興状況に大きな差が生じており、特に原発近隣自治体の人口・GDP回復率は著しく低い状況となっている。重点6分野を中心とした産業誘致が進む一方で、公的資金に依存したスタートアップや企業の誘致では定着率が低く、撤退する事例も見られ、地域への定着必然性が弱いという課題が指摘されている。本事業では、これらの課題を解決するため、マクロ統計調査、他地域事例調査、県外企業への個社ヒアリング、広域連携シナリオの検討、有識者ヒアリングを実施した。特に注目すべきは、アメリカのハンフォード地域の事例分析により「民間投資」「広域連携」「教育」の3つの観点が重要であることが明らかになった点である。県外企業24社へのヒアリング調査では、新規立地において補助金の有無が重要視される一方、労働力不足や住環境整備の遅れがボトルネックとなっていることが判明した。地域定着には継続的な労働力確保支援や固定費への補助、同業者の存在、自治体のPRが重要であることも明らかになった。広域連携については、復興状況の異なる市町村間で相互補完的な連携を通じて産業発展を図るシナリオが提示された。最終的に、補助金依存からの脱却と民間投資への移行、広域連携による効率的なリソース活用、継続的な人材育成システムの構築が、浜通り地域等の自立的・持続的な産業発展の実現に不可欠であると結論づけている。
