令和5年度製造基盤技術実態等調査(伝統的工芸品産業の支援に係る実態調査等事業)報告書
報告書概要
この報告は、令和5年度に経済産業省が実施した伝統的工芸品産業の支援に係る実態調査等事業について書かれた報告書である。全国241品目の伝統的工芸品の現状と課題を分析し、産業振興の方向性を検討している。
調査では、伝統的工芸品の生産額が長期的に減少傾向にあり、平成8年から平成29年にかけて約半分に縮小したことが明らかになった。従事者数も同様に漸減しており、高齢化と後継者不足が深刻化している。主要な課題として、国内需要の減少、技術・技能の継承困難、原材料・道具の調達困難、産地組合の事務局機能の低下が挙げられている。
需要減少の背景には、生活様式の変化により消費者ニーズに対応できていないことがある。事業者は製作に集中し販路開拓や経営的視点が不足しがちで、伝統技術を活用した新製品開発や他業種との連携が求められている。原材料については、供給者の高齢化や廃業により入手困難な材料が増加し、価格高騰も問題となっている。
産地組合では、常勤職員を配置できない脆弱な体制により、補助金申請すら困難な状況が生じている。一方で、日本人の半数以上が食文化や伝統文化に誇りを持っており、伝統的工芸品への潜在的関心は高いとされる。
課題解決に向けた取組として、海外展開やインバウンド需要の取り込み、現代ライフスタイルに適合した用途開発、観光産業との連携、技術継承システムの構築が重要とされている。国の支援制度では伝統的工芸品産業支援補助金を中心とした各種施策が展開されているが、小規模産地への支援強化や産地プロデューサー機能の充実が求められている。
検討会では、産地の自主的変革を促す支援の必要性、個別産地特性に応じた柔軟な対応、伝統的工芸品の概念整理と認知度向上の重要性が議論された。今後は産地が主体的に市場環境変化に対応し、戦略・調達・製造・流通・プロモーションを総合的に見直すことで、持続可能な産業として発展させることが目指されている。