令和5年度産業経済研究委託事業(日本企業の税務対応状況等に係る調査研究及び経済社会構造の変化と税制に関する調査事業)報告書
報告書概要
この報告書は、日本企業の税務対応状況及び経済社会構造の変化と税制に関して、経済産業省が令和5年度に実施した調査研究事業について書かれた報告書である。
本調査では、資本金1億円超の企業17,434社を対象としたアンケート調査を実施し、4,062社から回答を得て、企業の税負担の実態と税制が企業行動に与える影響を分析した。企業の税負担率については、法人税額、法人住民税額、法人事業税額の合計を税引前当期純利益で除した指標を用いて算定し、多くの企業が法人実効税率に近い20%台後半から30%台の税負担率となっているが、企業規模が大きい企業ほど税負担率の中央値が小さくなる傾向が確認された。
租税特別措置に関する分析では、研究開発税制を利用した製造業企業は利用していない企業と比較して研究開発費・売上高比率が1.5ポイント高いことが確認され、税制が実際に企業行動を促進する効果があることが示された。また、企業からの意見聴取では、制度の複雑さや適用要件の不明確さ、手続きの変更に対する負担などが主な課題として挙げられた。
国際的な企業立地に関する調査では、44社がシンガポール、27社がタイを税制面で日本より優位な国として挙げ、主に法人税率の低さや各種優遇措置の充実が理由となった。マクロ経済政策の分析では、主要国の財政ルールを調査し、特にアメリカの財政ルールについて詳細に分析を行った。アメリカでは裁量的経費について支出上限が設定され、義務的経費と減税措置についてはPAYGOルールにより財源確保が求められている。これらの調査結果は、今後の日本の税制政策検討において重要な基礎資料となるものである。
