令和5年度規制改革推進のための国際連携事業(イノベーションの促進に資するAIガバナンスに関する国際的な動向の調査)最終報告者
報告書概要
この報告は、経済産業省が実施した「令和5年度規制改革推進のための国際連携事業」における、イノベーションの促進に資するAIガバナンスに関する国際的な動向の調査について書かれた報告書である。
PwCコンサルティング合同会社が調査主体となり、4年目を迎えるGPAI(Global Partnership on AI)における議論状況の調査、国内有識者検討会の実施・運営、2023年12月にインドで開催されたGPAIサミット及びサイドイベントへの参加を通じて、国際的なAIガバナンスの動向を詳細に分析している。GPAIは29の国と地域が参加する官民国際連携組織であり、人間中心で責任あるAIの開発・利用を実現することを目的としており、責任あるAI、データガバナンス、仕事の未来、イノベーションと商業化の4つのワーキンググループで構成されている。
責任あるAIワーキンググループでは、環境のための責任あるAI戦略、ソーシャルメディアガバナンス、責任あるAIソリューションの規模拡大など6つのプロジェクトを実施し、気候変動対策と生物多様性保全におけるAI活用戦略の策定や、有害コンテンツ分類器の訓練方法の改善などに取り組んでいる。データガバナンスワーキンググループでは、プライバシー強化技術、共同生成データから生成AIへの権利とガバナンスモデル、AIデータ提供者としての政府の役割など5つのプロジェクトを推進し、シンガポールとの協力によるプライバシー強化技術の実証実験や、政府によるAIデータ共有の現行モデルの評価を行っている。
仕事の未来ワーキンググループでは、職場におけるAIオブザベーション・プラットフォーム形成、公平な仕事のためのAI、教育のための説明可能なAI、AI基盤ソリューションのためのデザインフレームワークの4つのプロジェクトを実施し、日本、フランス、ラテンアメリカの労働者環境にAIが与える影響を調査している。イノベーションと商業化ワーキンググループでは、中小企業によるAIの広範的な導入、AIイノベーション及び知的財産の保護、農業セクターでのAI導入、AI規制と並行したイノベーション促進の4つのプロジェクトを展開し、シンガポールとポーランドでAI4SMEポータルを立ち上げている。
2023年度の国際動向として、生成AIの台頭によりガバナンスの必要性に対する認識が高まり、アメリカのAIリスクマネジメントフレームワーク策定、EUのAI規則案採択、広島AIプロセスにおけるG7首脳声明発出など、各国でAI規制の枠組み整備が進展している。同時に、グローバル課題に対するAI活用の社会実装も進んでおり、環境分野では船舶燃料消費削減AIや廃棄物分析プラットフォーム、人権分野では多言語対応政府サービスチャットボットや診断精度向上AIなどの取り組みが展開されている。
GPAIサミット2023では、29加盟国から67人の専門家と120人以上の業界リーダーが参加し、33のサイドイベントが開催された。新たなGPAI専門家支援センターとしてGPAI東京センターの立ち上げが承認され、WG横断的な支援を行うことが期待されている。今後の方向性として、Japan AISIとの連携によるRAI国際基準の策定・社会実装、定期的なワークショップ開催、WG横断プロジェクトの支援などが提案されており、生成AIに焦点を当てた活動が東京から国際的に発信されることが期待されている。
