令和5年度グリーン・トランスフォーメーションリーグ運営事業費(カーボン・クレジット市場の取引活性化等事業)調査報告書
報告書概要
この報告は、カーボン・クレジット市場の取引活性化とマーケットメイカー制度の運営について書かれた報告書である。
本事業は、2050年カーボンニュートラル達成に向けたGX投資の促進を目的として、東京証券取引所が運営するカーボン・クレジット市場において、取引流動性を高めるためのマーケットメイカー制度を試行的に実施したものである。実施期間は2023年11月27日から2024年2月29日までの約3か月間で、省エネルギーと再生可能エネルギー(電力)の2つの売買区分を対象とした。
マーケットメイカーには住友商事、大和証券、丸紅、みずほ銀行、三井物産の5社が指定され、毎営業日午後のセッション2において継続的な売買注文の提示を義務付けられた。制度導入後、省エネルギー区分では一日平均売買高が2.4倍、再生可能エネルギー(電力)区分では6.1倍に増加し、取引価格のボラティリティも低下するなど流動性向上の効果が確認された。一方で、売り手と買い手のアンバランスや、マーケットメイカーのオペレーション負荷の高さなどの課題も明らかになった。
また、諸外国のカーボン・クレジット取引所として、EEX Group、ICE、LSEG、CME Group等の中大規模取引所と、Xpansiv、CIX、ACX等の新規取引所の調査を実施した。これらの取引所では、取引プラットフォーム運営のみならず、情報活用ビジネスやクレジット品質評価など、高付加価値化されたビジネスモデルが展開されている。さらに、経済モデル分析を通じて、市場に流通する環境価値の価格相関予測や市場の予見性向上に向けた検討を行った。