令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(流通テックの拡大に向けた課題調査・コンテスト実施)報告書
報告書概要
この報告は、流通業界のデジタルトランスフォーメーション促進について書かれた報告書である。流通業は日本のGDPの14パーセント、労働人口の16パーセントを占める主要産業であるが、現在は慢性的な人手不足、コスト上昇、収益構造の圧迫という深刻な課題に直面している。これらの課題解決には、従来の労働依存からの脱却とデジタル技術を活用した「リソース刷新」が不可欠であるとされている。
本事業では、流通業の非効率な業務課題を調査し、特に解決が重要な課題を特定することを目的とした。流通業9社へのヒアリング調査を実施した結果、全事業者から最初に挙げられた課題は「人手不足の深刻化」であった。さらに詳細な分析により、品出し業務、受発注業務、検品業務、棚卸し業務、紙帳票の多さ、業務量の不透明さという6つの特定課題を選定した。これらの課題は、機会損失による売上低下と人件費高騰の要因となっている。
各課題の解決方向性として、カメラやロボティクスの活用、需要予測の高度化、RFIDやAIの導入、デジタルリテラシーの向上などが提示された。また、流通テック企業を発掘する「第2回SUPER-DXコンテスト」を開催し、37社から応募があり、優秀賞4社を選定した。この取組みにより、流通業のデジタル人材拡大と流通テック企業との協業機会創出が実現された。今後は継続的なデジタル人材の獲得と育成を通じて、流通業界全体のDX加速と持続可能な発展が期待されている。
