令和5年度産業経済研究委託事業(中堅企業政策立案に向けた売上高等各種データに関する調査分析事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、中堅企業政策立案に向けた売上高等各種データに関する調査分析について書かれた報告書である。東京商工リサーチが経済産業省からの委託を受けて実施した令和5年度産業経済研究委託事業の最終報告書であり、地域未来投資促進法の政策効果を定量的に分析している。
国内投資の拡大、イノベーションの加速、所得の向上という3つの好循環を実現するため、中堅・中小企業の成長促進が重要とされている。しかし我が国では中堅企業の明確な定義が存在せず、政策検討に向けた実態把握が必要不可欠である状況にある。特に地域未来投資促進法に基づく承認地域経済牽引事業は、地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域に相当の経済的効果を及ぼすものとして期待されている。
本調査では域内仕入額分析とPSM-DID分析の2つの手法を用いて分析を実施した。域内仕入額分析では、地域未来投資促進法の承認事業者および税制活用事業者が全国企業と比較して域内仕入額が多いことが確認された。またPSM-DID分析では、傾向スコアマッチングと差の差分析を組み合わせることで、政策効果を適切に測定する手法を採用している。
分析結果として、2018年から2020年に地域未来投資促進法の牽引事業者に選定された企業において、従業員数、売上高、給与総額、設備投資比率などで明確な政策効果が確認された。特に中小企業における政策効果が顕著であり、製造業と非製造業の両方で従業員数と売上高に関して有意な結果が得られている。域内仕入額でも政策効果が確認され、地域未来投資促進法の趣旨に沿った結果となった。
今後は新たに設けられる中堅企業向け優遇枠により、中小・中堅企業のさらなる成長と日本経済の底上げが期待される。