令和5年度産業経済研究委託事業米国の税制改正動向にかかる調査研究事業調査報告書
報告書概要
この報告は、米国のインフレ削減法(IRA)における税制改正動向について書かれた報告書である。2022年8月に成立したIRAは、2022年度からの10年間で7,390億ドルの歳入増を図る一方で、4,370億ドルの投資を実施するものであり、特にエネルギー安全保障及び気候変動対策に関しては過去最大規模となる3,690億ドルを投資することが盛り込まれている。IRAの政策目的は、クリーンエネルギーの推進、税制改革による公平性確保、雇用創出、米国製造業の強化、医療費削減の5つの柱から構成されている。税額控除プログラムには、投資税額控除、生産比例税額控除、購入税額控除の3つの段階が設けられており、政策目的に応じて異なる控除率が適用される。また、実勢賃金及び見習い雇用要件を満たすことで税額控除率の加算が可能となる。クリーン自動車購入税額控除においては、懸念国の事業体(FEOC)要件が重要な要素となっている。さらに、税額控除の譲渡制度と還付制度という画期的な活用方法が導入されており、これにより課税所得がない事業者でもクレジットの換金が可能となった。IRA成立から1年経過時点で、産業界による1,100億ドルのクリーンエネルギー製造投資が表明され、17万人以上の雇用創出が実現したとされている。
