令和5年度石油・ガス供給等保安対策調査等事業費(安全技術普及事業(事故発生原因分析等調査))報告書
報告書概要
この報告は、都市ガスの消費機器等による事故事例の原因分析および再発防止策の検討について書かれた報告書である。本調査は産業構造審議会ガス安全小委員会が掲げた「死亡事故をゼロにする」という安全高度化目標の達成を目指し、2023年に発生したガス事故について詳細な分析を実施したものである。
2023年の消費段階事故件数は107件となり、前年と比較して20件減少した。死者数は0名で前年と同様であったが、負傷者数は8人と前年比2人増加し、排ガス中毒者数は11人で前年比5人減少となった。事故現象別では、漏えい・着火に係るものが105件で全体の約98%を占め、不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故が2件発生した。
事故発生場所の分析では、業務用施設における事故が全体の22.3%を占めているものの、死傷者数では全体の77.4%に達しており、業務用施設で事故が発生した場合に多数の被害者を伴いやすい傾向が明らかとなった。特に排ガス中毒事故については、過去5年間で発生した15件のうち13件が業務用施設で発生しており、飲食店などの業務用厨房における換気不良や給排気設備の異常が主な要因となっている。
事故原因の類型化では、ヒューマンエラーによる事故が高い割合を占めており、ガス栓やゴム管、接続具等で発生する事故の約96%がヒューマンエラーに起因していることが判明した。これらの事故防止には、消費者に対する継続的な周知啓発活動と安全器具の普及促進が重要であると結論づけている。また、製造段階事故は8件、供給段階事故は135件発生し、それぞれ前年から増減があったが、総じて安全対策の継続的な改善が必要であることが示された。