令和5年度燃料安定供給対策調査等事業(CCSバリューチェーン構築の検討に係る調査等事業)最終報告書
報告書概要
この報告は、CCSバリューチェーン構築に関する調査事業について書かれた報告書である。2050年カーボンニュートラル実現に向けてCCS技術の社会実装が急務となる中、国内事業者が優位性を持つ設備・技術を特定し、産業成長戦略を検討することを目的としている。
調査では、CCSバリューチェーンを分離・回収、輸送、貯留、モニタリングの各段階に分類し、各種設備の技術概要と国内事業者の優位性を詳細に分析した。その結果、化学吸収法では三菱重工が世界シェア70%以上を占め、固体吸収法では川崎重工とRITEが実証試験で先行するなど、複数の分野で国内事業者の技術的優位性が確認された。さらに、LCO2船では世界初の実証船建造、耐CO2パイプでは日本製鉄とJFEスチールの製造実績、光ファイバー計測技術や高品質地震計の開発など、幅広い技術領域での強みが明らかとなった。
市場規模評価においては、抽出された技術の合計市場規模が2030年約7兆円、2040年約27兆円、2050年約45兆円に達する見込みであることが示された。特に化学吸収法は14兆円、耐CO2パイプは21兆円の大きな市場が期待される。CCS全体の世界市場規模は2050年までの累計で約1,300兆円に達すると予測され、我が国にとって極めて有望な成長分野である。産業成長性の観点では、既に商業化されている技術については早期のシェア獲得が重要であり、実証段階の技術については研究開発促進により先行者優位を確立することが求められる。