令和5年度中小企業実態調査事業(小規模事業者支援に関する調査事業)報告書
報告書概要
この報告は、デジタル化の進展、人口減少、自然災害の頻発、新型コロナウイルス感染拡大及び資材価格高騰等により大きく変化した経営環境下にある小規模事業者の実態と支援のあり方について書かれた報告書である。
小規模事業者は日本全体の企業数の約85%を占める285.3万者であるものの、売上金額や経常収益では約7%、純付加価値額では約9%に留まり、経済全体への影響は限定的である。しかし、郡部ほど小規模事業者の割合が高く、地域経済を下支えする重要な存在となっている。一方で、DXに取り組む小規模事業者は8.8%と低く、デジタル化の遅れが顕著である。また、規模の小さい企業ほどコロナ関連融資の利用率が高く、小規模企業では約58%が利用している状況である。
補助金活用事業者の分析では、事業再構築補助金や持続化補助金の採択企業は、売上高や従業員数が多い傾向にあり、成長への影響も確認された。文献調査からは、小規模事業者の役割として従来の「国内外の新たな需要の開拓」「創業等を通じた個人の能力の発揮」「地域経済への貢献」に加え、「社会課題を起点とした新たなビジネスの創出」が新たな役割として期待されることが明らかになった。
ヒアリング調査では、小規模事業者の課題として人材確保と魅力ある商品・サービス開発が挙げられた。支援策は充実しているものの、事業者にとって何を選択すべきか判断が困難で、手続きの煩雑さも負担となっている。地方自治体向けアンケートでは、広域的な支援の取組を促す制度スキームの構築に対するニーズが高いことが確認された。
総括として、小規模事業者は特に地方を下支えする存在であり、山積する課題解決には連携が不可欠である。支援実現には利便性向上と支援者側の関係構築が求められるとしている。