令和5年度原子力の利用状況等に関する調査事業(海外諸国の処理水の取扱い状況及び多核種除去設備等処理水の処分技術等に関する調査等)報告書
報告書概要
この報告は、海外諸国の処理水の取扱い状況及び多核種除去設備等処理水の処分技術等について書かれた報告書である。福島第一原子力発電所のALPS処理水の取扱いに関連して、海外の処理水放出事例や分離技術等を調査したものである。
調査では、米国、フランス、中国、ロシア、韓国の原子力施設における処理水の海洋放出時の安全性確保に係る取組を調査し、各国の実施主体、根拠法令、評価手法、評価結果の公表状況などを詳細に分析している。米国ではDiablo Canyon発電所やThree Mile Island発電所の事例を、フランスではFlamanville発電所を対象として調査が実施された。また、中国、韓国、台湾、オーストラリアにおけるALPS処理水の分析のための国際輸送に係る規制についても調査を行っている。
さらに、トリチウム分離技術の最新動向について文献調査や関係者へのヒアリングを実施したが、直ちに実用化できる段階にある技術は確認されなかった。主要国及び日本の原発立地地域におけるトリチウムの大気・海洋・河川・降雨の濃度データを収集し、英国、韓国、日本等の環境中トリチウム濃度を整理している。主要国のトリチウム排出量についても、英国、フランス、韓国、米国、ドイツ、中国、カナダ等の原子力施設からの最新の排出実績データを収集・分析している。これらの調査結果は、ALPS処理水の安全な処分方法の検討に資する基礎資料として活用されるものである。