令和5年度中小企業実態調査事業(地域・社会における価値創出を担うキーパーソン人材の発掘・深掘と当該人材の活動が及ぼす社会的影響・価値の言語化試行を通じた地域の包摂的成長への貢献可能性調査)地域と価値とビジネスをめぐる探求
報告書概要
この報告は、地域・社会における価値創出を担うキーパーソン人材と事業の社会的価値について書かれた報告書である。近畿経済産業局が実施した令和5年度中小企業実態調査事業として、日本経済・産業が直面する人口減少という構造変化に対応し、地域の包摂的成長を実現するための調査研究が行われた。調査では近畿、東北、四国エリアの事業者13名を対象に、社会的価値の創出と利益の関係についての意識調査を実施している。調査方法として、現地でのインタビュー調査、事業者同士のワークショップ、リサーチツアーを通じて、ロジックモデルというフレームワークを活用しながら事業者の価値創出プロセスを分析した。調査結果から、事業者は自らの事業活動を金銭的利益の増大だけでなく、社会的価値の創出という観点からもデザインしている傾向が明らかになった。しかし、社会的価値の創出と金銭的利益の増加は必ずしも比例するわけではなく、この課題に対する評価・支援のあり方が重要な論点として浮上している。また、行政や金融機関による社会的価値の評価には課題があり、中長期的な視点での支援の仕組みが必要であることが指摘されている。本調査を通じて、地域の包摂的成長を見据えた事業の社会的価値への評価・支援についてのヒントを得ることができ、多様なセクターの人々が共に考える契機となった。
