令和5年度中小企業の人材確保に関する調査事業(中小企業実態調査委託費)調査報告書
報告書概要
この報告は、中小企業の人材確保に関して実施された調査事業について書かれた報告書である。近年、デジタル化や脱炭素化、個人の価値観の多様化など経営環境の変化が顕在化する中で、企業が持続的に企業価値を高めるためには事業ポートフォリオの変化を見据えた人材ポートフォリオの構築が必要となっている。一方で、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、特に地域においては人材不足が喫緊の課題となっており、兼業・副業人材をはじめとした多様な人材の活用が鍵となっている。本調査事業では、中小企業が戦略的な人材活用やマネジメントを実施する上で前提となる「ジョブの明確化」に着目し、ジョブの明確化を通じて経営課題や人材課題の解決に至った実践事例の収集と分析を行った。調査は事前企業調査、文献調査、企業インタビューの3つの手法により具体的な実践事例を収集し、さらに人材向け意識調査と有識者会議を通じて地域における活用可能性を分析した。18社の企業インタビューから、ジョブの明確化は単に業務内容・職種を明確化するだけではなく、社員に対して求める役割や期待成果を明確化することが重要な要素であることが確認された。また、会社の目指すべき方向性である経営方針を明確化することで、ありたい姿と現状のギャップを埋めるための具体的な施策が検討可能となり、従業員エンゲージメントの向上にもつながることが判明した。約19,000名の人材を対象とした意識調査では、魅力に感じる人材育成制度として1on1面談等を通したキャリアパスの見える化が全世代で1位となり、求人を見る際に重視する項目として業務内容の詳細さと必要スキルの明確さが上位となった。調査結果として、ジョブの明確化を起点として新規採用・外部人材活用、人材育成・人事評価制度の構築、働き方改革等の戦略的な人材活用・マネジメントの実行につながり、生産性向上や既存事業の強化、新事業創出等の経営課題解決に寄与することが示された。