令和5年度重要技術管理体制強化事業(蓄電池に係る海外の動向調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、蓄電池に係る海外の動向調査について書かれた報告書である。
本調査は、経済安全保障の観点から日本が蓄電池技術で優位性を確保するため、2023年8月に発効した欧州電池規則の詳細分析と対応策の検討を目的としている。欧州電池規則は、欧州グリーンディールの一環として制定され、2050年カーボンニュートラル実現に向けた重要な規制である。
規則の主要な特徴として、カーボンフットプリント宣言、デューディリジェンス対応、バッテリーパスポートの導入、再生材含有率の義務化という4つの柱がある。対象となる電池は、電動車載用、産業用、LMT用、SLI用、ポータブル電池の5種類に分類され、電池種類ごとに異なる規制スケジュールが設定されている。最も早い規制はCFP宣言で2025年から開始され、段階的に他の要件が追加されていく。
事業者への影響として、製造者から経済事業者まで幅広い関係者に対応義務が課される。特に、コバルト、リチウム、ニッケル、天然黒鉛を対象とした人権・環境面でのデューディリジェンスや、2031年からの再生材最低含有率の義務化は、サプライチェーン全体での対応を求めている。
報告書では、欧州の関連ステークホルダーとして、RechargeやEUROBAT等の業界団体、GBAやEBA等の国際組織について分析している。また、韓国や米国の業界団体の動向も調査し、各国における対応状況を比較検討している。これらの分析を通じて、日本企業が欧州市場で競争力を維持するための戦略的示唆を提供している。
