平成30年度原子力の利用状況等に関する調査(国内外の原子力政策・法制度に関する動向調査)調査報告書
報告書概要
この報告は、国内外の原子力政策・法制度に関する動向について書かれた報告書である。
報告書では、海外主要国における電力需給状況と原子力政策の動向について詳細な分析が行われている。米国では、電力自由化の進展とともに再生可能エネルギーの大量導入により、原子力発電を含むベースロード電源の経済的困難が深刻化しており、イリノイ州やニューヨーク州ではゼロエミッションクレジット制度を導入して原子力発電所の維持を図っている。英国では、2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減を目標とし、差額決済契約制度を通じて低炭素電源への投資を促進している。フランスでは、原子力発電比率を2025年までに50%に引き下げる政策を掲げつつ、実際の目標年次は2030年代に延期されている。
原子力産業の国際展開については、各国が異なる戦略を展開している。韓国は政府主導によるトップセールスと官民一体となったパッケージ型支援により、UAE原子力発電所建設を受注したが、建設遅延や技術的課題が顕在化している。中国は「一帯一路」構想の下で新興国向けの輸出を積極的に推進し、政府系金融機関による手厚い資金支援と燃料供給保証を武器として国際市場でのシェア拡大を図っている。ロシアは国営総合原子力企業ロスアトムを軸に、Build-Own-Operate モデルを採用し、導入国での国産化支援と政府による財政支援を組み合わせた戦略により、34基の建設契約を12か国から獲得している。
一方、日本の原子力プラントメーカーは、東芝がウェスチングハウス社の売却により海外事業から撤退し、日立も英国ホライズンプロジェクトの凍結を決定するなど、海外展開において困難な状況に直面している。三菱重工業は国内事業の安定化を優先し、海外事業についてはリスク管理を重視する方針を採用している。各国の原子力産業は、政府の政策方針や財政支援の程度により大きく異なる展開を見せており、国際競争において政府の関与が重要な要素となっていることが明らかとなっている。
